8-01. 本番の心構え
本番緊張すると、どうしてもブレスが浅くなってしまいます。また、緊張で指の先に血液が行かなくなって、木管楽器奏者の人は特に苦労します。ステージ裏 で本番を待つ間、深呼吸をしたり、手をあたためておいたりしましょう。特に冬の本番では、ポケットにカイロを入れておくと良いでしょう。
本番ステージに上がったら「自分達は最高の演奏ができる」という自信と、「私たちの音楽をどうぞ聴いてください」という余裕が必要です。演奏が始まったら、もし失敗してしまっても気にせず、常に先のことを考えて下さい。「平常心でいろ」とは無理な話ですが、せめて自分を見失わずに本番を終えて下さい。
ちなみに、いつも練習を真面目にしないでいて、本番だけ自信を持つのは無理な話です。本番での自信と余裕は、普段の地道な練習によるものなので。
8-02. 本番の練習
本番は誰でも緊張するものです。とくに何も知らない初心者がステージに上がると、パニックになってしまい、本番何も吹けなかったということになるかもしれません。そんなことを防ぐため、事前に本番に近い状況を設定して「本番の練習」を行っておいたほうが精神的にも楽です。
本番の練習は、本番通りのタイムスケジュールで、何分にリハーサル室に入って、舞台裏で待って、ステージに上がって準備をして本番……というふうに、すべての流れを確認します。本番の2~3日前にやっておくと良いでしょう。
本番での練習では、演奏前or演奏後に全員を立たせるのかどうかも確認して、立つならその練習もしておきましょう。また、特にコンクールの本番の練習は、奏者がステージに入る前に、譜面台の高さをめちゃくちゃにしたり、椅子・譜面台の数をわざと増減させたりと、コンクール当日に起こりうる状況を再現し ましょう(コンクールのステージ係は学生の場合も多く「椅子が足りない!」など混乱も予想されますので)。打楽器はもちろんステージ入り・出の練習もしましょう。打楽器の配置が遅いと混乱しますので。
8-03. 緊張をする練習
本番、緊張しているときにソロを吹かなければならないという人は、あらかじめ「緊張をする練習」をしておきましょう。みんなの前で一人で立って吹いたりして、自分を緊張している状態に持っていって、上手く吹けるかということを試します。「みんなの前でソロを3回連続で成功させる」というような条件を設定して、緊張をする練習をしておきましょう。
8-04. 本番での失敗
よく「本番中の失敗はしょうがない。失敗を気にせず、常に先のことを考えろ」といいます。これは本番中に言えることです。本番中は起こした失敗のことをすぐ忘れて、自分が次にしなければならないことを常に考えて下さい。特に、失敗すると首をかしげたりにやりと笑ったりする人がいますが、これは観客から見ると「あ、失敗したな」とバレバレです。失敗を失敗と思わせないような態度を取るのも大事です。
しかし、本番が終わったら考えてみて下さい。「なぜ自分は失敗したのだろう」と。失敗の原因の多くが「練習不足」です。本番の緊張が原因で失敗したのも、「緊張をする練習」「本番の練習」が足らなかったためです。失敗を後悔はしてはいけませんが、反省はしましょう。
実際、全国レベルの団体は、本番の失敗はほとんどありません。これはその団体の練習の量の多さと質の良さを物語っています。普段の練習から「失敗はしょうがない」という甘い考えを持つのはやめましょう。
また、本番での失敗が少ない団体は、本番の数自体も多く、本番慣れをしているので、余裕を持って本番に臨むことができるという側面があります。地域の行事に参加したりして、本番を多く経験させておくことも、本番での失敗を減らす重要な手段です。
8-05. リハーサル
本番前のリハーサルでは、曲を全部通す必要はありません。曲の最初と最後、それと心配な所を合わせるくらいです。
特に金管楽器に注意してほしいのが「リハーサルで吹きすぎない」ことです。演奏会など長いプログラムの時は、リハーサルで金管楽器はあまり吹かないよう指示すべきです。本番に疲労を残さないようにしましょう。
また、本番直前のリハーサルではあくまで演奏の確認のためのものです。リハーサルで曲のカットなどが起こると、奏者は混乱してしまうので、本番直前の曲の変更はなるべく避けましょう。「ぶっつけ本番」は絶対しないように。
8-06. 本番時の服装
本番のときは、服装に注意しておきましょう。だらしなくワイシャツを出している男子や、短すぎるスカートをはく女子がいるような団体は、もう外見からして良い演奏は期待できないと判断されます。全員がきちんとした服装で本番を迎えられるようにしましょう。(しかし、あまりに服装にこだわり過ぎて、演奏に 支障が出ないようにしたいものですが)
ステージ上では黒靴が良いとされます。打楽器パートで、演奏中にステージ上を移動するような人は、動きやすいように黒の運動靴でも良いでしょう。服装は その学校の制服や独自のステージ衣装などがありますが、定演のポップスステージではカジュアルにTシャツもいいでしょう。
ここで注意しなければならないのは「練習時もきちんとした服装で」ということです。練習の基本に「できるだけ本番と同じ状況で練習する」ことがあります。本番でいきなりワイシャツをズボンに入れて、腹式呼吸ができなくてよく吹けなかった、なんてことにならないように、日頃から本番に出て恥ずかしくないような服装で練習しましょう。
8-07. 打楽器の事故
「本番中、シンバルがスタンドから落ちて『ガッシャーン!!』」なんて、起こり得ないような話ですが、実話です。コンクールや定演などの本番中に、打楽器(シンバル、スネア、果てはドラやチャイムなど)が落ちてしまって観客の冷笑を買う、そんなことがよくあります。本番中はみんな普段とは異なる精神状態 となるので、何が起こるか分かりません。特に打楽器関係の事故が目立つので、ここで注意しておきます。
また、Timp.の置き位置を間違えてしまって、本番手も足もでなかったという話もあります。注意しましょう。
8-08. タイムテーブル
コンクールでは、どこの団体が何時に誘導開始で、本番が何時で……といった細かい時間が書いてあるタイムスケジュールが配られます。演奏会を開催するときも、何時に何の曲が始まって、休憩がどれくらいで……といったタイムテーブルを作成しておきましょう。
本番前にアクシデントがあって時間的にきつくなってしまい、奏者が動揺して演奏に影響が出ることも考えられます。タイムテーブルを組む際には、時間に余裕をもたせましょう。特に、本番当日に会場までバスで行くとか、電車で行くとかいう場合は、時間に余裕をもたせましょう。
8-09. 聴衆の携帯の使用
本番中、弱奏部の緊張した場面になったとき、いきなり客席から「チャラリ~ラリ~」と携帯の着信メロディーが鳴って、本番が台なしになってしまうことがあります。ホール内での携帯電話の使用は厳禁です。必ず音が出ない状態にすべきですし、演奏会を開催するときはその旨、本番が始まる前に放送したり、プログラムに記載したりしておくとよいでしょう。
「音が出なければいいんでしょ?」と音を出さずにメール機能を使っている人は結構多いのですが、これも好ましくないかもしれません。客席で携帯の液晶がちらつくのを見ると、本番中の奏者が気になってしまう場合もあります。
8-10. 体調管理
本番に向けて、各自体調管理をしっかりするように部員に指導しましょう。いざ本番になって「カゼでソリストがいません」なんてシャレになりませんので。体調管理も実力のうちということを自覚させましょう。
冬はカゼをひく確率が高くなるので当然気をつけるべきですが、意外と夏にカゼをひく人が多いものです。夏はクーラーをつけっぱなしで寝冷えしたり、冷た いものを飲み過ぎてゲリをしたりする危険があるので、注意しましょう。確かに、こうした部員の私生活まで口を出すのはどうかとは思いますが、本番前はもはや部員一人一人が「自分だけの体ではない」状況となります。注意してし過ぎることはないでしょう。
8-11. 本番前の練習
コンクールでも演奏会でもそうですが、本番前の練習では基礎力はそれほど上がりません。基礎力はオフシーズンに高めておいて、本番前の練習ではバンド全体を合わせるといったことに重点を置きます。本番前になってあわてないように、普段から基礎力を高めておきましょう。
8-12. 本番の知識
【拍手】演奏会の本番で「教育長挨拶」などという時などに、拍手をしなければならないときがあります。ステージ上に楽器を持って座っている奏者はこういうとき、靴で床を鳴らして拍手の代わりをしたりします。
【礼】演奏終了後にするもの。アンサンブルの時は全員で礼をするが、指揮者がいる時は指揮者だけ礼をする。また演奏時は指揮者を見るため中央を向いて座っていても、礼をするため立ち上がった時は全員が客席に正面になるように立つ。
8-13. 本番前の注意事項
8-14. OB等の手伝い
コンクールや演奏会の本番当日は、楽器を運んだり色々準備したりと結構大変です。このような肉体的・精神的な疲労は本番の演奏に影響してしまうので、できるだけ当日本番までは疲れるような事は避けたいものです。そこで当日、OB/OGや保護者の方に楽器運搬などのお手伝いをお願いするのもいいでしょう。 ただ、このような外部の人にお手伝いをお願いする時は、楽器の扱い方等をしっかり伝えておく必要があるでしょう。
8-15. 直前の楽器メンテ
本番前になったら、楽器屋さんに来てもらうなどして楽器の修理や調整をしておきたいものです。楽器の調子がおかしい状態のまま本番を迎えることのないようにしましょう。
しかし、本番直前になって楽器の管に関わる大きな修理をしたり、また楽器の管の中を大掃除したりするのは危険です(緊急の場合は止むを得ませんが)。な ぜなら、今までの吹き心地が変わってしまい、本番に影響が出る可能性があるからです。修理や掃除をするなら、新しい吹き心地に慣れるまでの期間を考慮して おきましょう。
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